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白い針が陽光にきらめき、藍色の空に映える
白い針を持つものは「シルバー・チョラ」と呼ばれる

花弁が落ち、残された種子が新たな生命を育む

面白い形状の岩を発見!
勝手に“げんこつ岩”と命名する

標高の高い場所ほど、大型の樹木が多くなる

大岩の上に小型の岩が絶妙なバランスで鎮座する

周囲が闇に覆われると、空には月や星が姿を現す
「砂漠で植物観察」――そんな言葉を聞くと、恐らく多くの人は不思議に思うことだろう。日本の人々にとって、砂漠といって思い浮かぶのは漠々たる砂の世界。そこから想起されるのは「死」や「枯」であり、およそ生とは遠いのではないだろうか? 

もちろんアメリカにおける砂漠も、大地の大半が岩と砂に覆われる渇きの世界だ。だがそこには、僅かながらの水で枝葉を伸ばす植物があり、岩があり、日陰があり、そこに依拠する動物たちもいる。そして、それら砂漠のユニークな植生を堪能する場所として、“ヨシュア・ツリー国立公園”以上に適切な場所はないだろう。

ロサンゼルス市内より東にわずか300km。車で3時間程の距離に広がる“ヨシュア・ツリー国立公園”は、モハーヴェ砂漠とコロラド砂漠という二つの砂漠により形成される。公園と言っても、その面積は東京都の1.5倍。公園南東部は低地砂漠であるコロラド砂漠、北東部側が高地砂漠のモハーヴェ砂漠となっており、モハーヴェ砂漠の標高はなんと2000メートルにも達する。そして、それぞれの砂漠側(公園の南東側と北西側)に入り口があり園内を斜に切るように車道が走るが、コロラド砂漠側から入りこの道を北上していくと、高度により植生が移り変わっていく様をまざまざと実感できるのだ。

まず園内に入り最初に目に付くのは、比較的背丈の低い草木たち。中でも目を引くのが、チョラと呼ばれるサボテンだ。このチョラは、幹がずんぐりとしているわりにはトゲが短く、どこか小動物を連想させる形状。どうやら地元の人たちもそのように感じたらしく、特にコゲ茶色のチョラは“テディベア・チョラ”と呼ばれている。

テディベアの群を走り抜け北上すると、地平線の向こうに丸みを帯びた巨大な岩の一群が、あまりに唐突に姿を現す。長き歳月をかけ、風により研磨された岩の表面は実に滑らか。その流麗さが荒廃とした周囲の風景とあまりにマッチせず、それこそ巨人たちが他所からこれらの岩をひょいと持ち上げて運び、戯れに積み上げていったとしか思えないほどだ。

それら岩山たちを後にし、モハーヴェ砂漠の中でも最も標高の高い一帯に達すると、ついに公園の名が示すヨシュア・ツリーと対面することになる。
徐々に、段階を追って見え始めるのではない。それこそ、大地に境界線がひかれているかのごとく忽然と姿を現し、以降は延々、360度見わたす限りのヨシュア・ツリーなのだ。

この独創的な形状の木の名は、聖書の一説、ヨシュアが空に向け手を伸ばす挿話に起因しているという。果たしてヨシュアさまがこの木のごとく珍妙な姿をしていたかはいざ知らず、岩と砂と、そしてやせ細った草木のみで構成されるこの砂漠の高みにて愁然と立ち尽くし、天へと枝葉を伸ばすその姿は、見る者にある種の渇望感を覚えさせることは確かだ。

朝に南東側から公園に入り、サボテンや岩山などの見所で軽くハイキングをしてくると、ちょうどこのヨシュア・ツリーの一群に達したあたりで、太陽は西の空へと傾きだす。

聖書によると、ヨシュアはギブオンの地にて太陽の巡りを止める奇跡を起こしたとされる。だがここモハーヴェ砂漠では、オレンジ色の巨大な太陽はヨシュア・ツリーが精一杯に伸ばすその手をすり抜けて山の向こうへと姿を消し、それと入れ代わるように東の空から降りる闇の帷には、無数の星が灯りをともす。

このように太古から当地では、太陽と星が幾度も幾度も、ヨシュア・ツリーの上空を駆け抜けてきたはずだ。だがそれにも関わらずこの砂漠は、恐らくはヨシュアが太陽を止めたとされるその当時と変わらぬ情景を、今も私たちに見せてくれている。

それだけで、十分に信じがたい奇跡である。
  海外特集 (毎月1日・16日更新)
  vol.046 悠久の砂漠で、巡る時を見る
  取材地 アメリカ・ヨシュア・ツリー国立公園
  記事執筆・取材・撮影 内田 暁
  2007. 2. 16 掲載
 
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 海外特集「この空を越えて」を執筆したライターのショートエッセイを写真とともに掲載。
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